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海中世界の利害関係

 柔らかそうなイソギンチャクの布団に鮮やかなオレンジ色のクマノミ類が包まる姿、ダイビング以外に水族館やTVなどでも一度はご覧になったことがあるのではないでしょうか。
この「クマノミとイソギンチャク」の関係に代表されるような、異なる種類の生き物が深い関係を持ちながら共に生活することを「共生」といいます。
それぞれの生物が利益を得る場合や片方のみが利益を得る場合、あるいは片方のみが利益を得て、その相方は逆に害を被るなど、それぞれの利害関係で「相利共生」、「寄生」といったいくつかのパターンがあります。
「共生」はそのような利害関係をすべて含んだ大きな意味で使われます。

水族館では生き物の生活を紹介する展示要素のひとつとして、この「共生」関係をよく取り上げます。新江ノ島水族館でも先にあげた「クマノミとイソギンチャク」や「深海生物の共生(バックナンバー参照)」、「ハゼとテッポウエビ」、「ヤドカリとイソギンチャク」、「ホンソメワケベラと魚類(ホンソメワケベラも魚ですが・・・)」といった関係を紹介しています。
ここではそのひとつ「ホンソメワケベラと魚類」を少し掘り下げてみます。
 
ホンソメワケベラと魚類

当館の相模湾大水槽の丸い窓がある辺りでは、ホンソメワケベラというベラの仲間がクリーニング店を開いています。体についた寄生虫などをクリーニングしてもらうためにいろいろな魚たちが集まってくるのです。独特の泳ぎは「きれいにしてあげるよ〜」とアピールしているかのようです。

クエなどのクリーニングされる側はその場でじっとして、口をあけて鰓の辺りや口の中まできれいにしてもらいます。ここでの大事な約束はクリーナーであるこの魚を「食べないこと」であるのは言うまでもありません。
しかし、残念ながらこの掟を破る魚がいるようです。再び我々がクリーナーを搬入するまで、店は閉店となります。
さて、このホンソメワケベラは基本的に業者さんから購入します。しかし購入した中にニセクロスジギンポのようなホンソメワケベラのそっくりさんが混じっていることがあります。このそっくりさんは、クリーナーの振りをして魚に近づき、鰭や皮膚の一部をかじるという困った魚です。我々でもなかなか区別がつかないことがあります。がんばって掃除してくれよ、と水槽に放ったら傷ついた魚が出てきたりという情けないことが起こります。
愚痴っているようにしか聞こえないかもしれませんが、そうでもありません。我々はここで「擬態」という新たなドラマを紹介できるからです。

このように「共生」といってもすべてきれいな図式におとしこめるわけではありません。例外や逆手にとる生き方もありなのです。いずれにせよ、我々人間を含めてすべての生き物は他の生き物と何らかのかかわりを持って生きています。
この地球という器の中で"共"に"生"きているのです。

 
(展示飼育グループ 崎山 直夫)
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